コラム

Column

解雇しなければならない際に気を付けたい「法律」と「プライド」

|はじめに
新型コロナウイルス感染症の影響によらずとも、ミスマッチや能力不足、協調性欠如などの理由でやむをえず解雇を検討しなければならない場面があります。
解雇はその伝え方や手順を間違えると、騒ぎが大きくなり会社に多大なダメージを与える可能性があるため、法律だけでなく感情も踏まえた交渉術が求められます。

解雇問題で重要なポイントである「法律」と「プライド」について考察していきます。

 

|法律上のポイント
解雇を考える上で把握しておくべき法律上のポイントは次の3つです。

① 解雇とは会社から一方的に雇用契約を解除すること
② 客観的に合理性のない解雇は無効である
③ 解雇する場合は30日以上前に予告(または解雇予告手当の支払い)をする必要がある

①について、解雇はしばしば退職勧奨と比較されます。
解雇が会社の一方的な意思表示であるのに対し、退職勧奨は「退職の提案」であり、労働者の合意が必要である点で異なります。

また、②について、日本では判例等で確立されている合理性の判断基準のハードルが「かなり高い」ことに注意が必要です。横領などの犯罪行為はまだしも、能力不足や勤務成績不良で解雇をするのは容易ではありません。この問題は、解雇した労働者から「この解雇は客観的合理性がないから無効だ、だから私はまだ労働者として在籍する権利がある」と主張されることで顕在化します。

加えて、③のように解雇の場合には解雇予告手当の支払い義務も出てくるため、実は多くの解雇事案は「まずは退職勧奨案件として労働者と交渉をする」方が得策です。

 

|プライド
退職に関して労働者の「プライド」を無視するとしばしば感情的に対立して問題が複雑になります。

以下、典型的なプライドとその交渉方法をまとめました。

プライド1:能力(自分には能力がある)
→対策:頭ごなしに「能力がない」と決めつけず、客観的な作業量や作業品質を他の一般的な従業員と比較する資料を見せながら話し合う。

プライド2:勤続年数(長く会社に貢献してきた自負がある)
→対策:「偉そうにする」「新人をいびる」などの問題が多い。あらかじめ問題点を指摘し、時代変化に合わせて態度を改めるよう諭す。勤続年数に応じた褒賞(退職金アップなど)を用意すると交渉しやすい。

プライド3:個人的信条・信念(仕事のやり方に対する強いこだわり)
→対策:個人的信念の善悪を会社が判定しない。あくまで「その信条・信念が仕事や同僚にどう影響を与えているか」についてのみ評価し、必要に応じて指導をしている立場であることを伝える。組織との価値観の違いを認識することで退職がスムーズになることも。

プライド4:実績(やることをやっているのに認められないと思う)
→対策:「役立たず」「給料泥棒」などの言葉は決して使わない。会社の指示・采配が及ばなかった点を詫びつつ、実績について会社と本人の間にズレがあることを確認しながら、定量的目標を設定し、約束してもらうなどの交渉がよい。

お互いがある程度納得できるような形で契約を解消するには細かな配慮が必要です。

実は、採用のとき以上に「退職」のときにこそ、その会社の本質がでるものなんですね。